もしかするとあなたは〝自然欠乏症候群〟の初期段階では?

 自分は病気? いや、そうは思えない。じゃあ、心と体はともに健康? いや、そうも思えない。健康診断で血圧や血糖値はちょっと黄色信号と言われてはいるが、〝病気〟とまでは思えないし……。だからといって〝心身ともに快調〟という自覚はまったくない。ただ何となく〝心がすぐれない〟というか……。近ごろそんな人たちがたいへん増えているようです。しかも最近の「コロナ禍」でいろいろと〝自粛〟せざるをえないストレスで、いっそうその傾向が増しているようです。

思い当たる項目はありますか?

① 電車に乗るとすぐにスマホ画面とにらめっこしていませんか?
② パソコン相手の仕事に日々拘束されていませんか?
③ 家にいるときゲームにはまっていませんか?
④ 静けさや自然の音にときどき触れていますか?
⑤ スポーツとまではいえなくとも時々ウォーキングや近所の散策をしていますか?
⑥ ここ数日、仕事と飲み屋やレストラン以外の屋外の記憶がいろいろありますか?
⑦ 空を見上げて雲の流れを見ながらボーッとすることがありますか?

①〜③にYESがある人、④〜⑦にNOがある人は要注意です。

人間は、自然から遠ざかるほど病気に近づく

 これは紀元前の哲学者ヒポクラテスの言葉です。ただ何となく〝すぐれない心と体〟の問題は、西洋医学や薬の力で解決できるものではありません。もちろん〝自然欠乏症候群〟というのは、単にあなたの身近に自然環境がないことだけで起こるものではありませんし、食生活や子育て、家族や仕事などの人間関係、家計の問題なども大きな影響があります。そしてこれらはアルコールやスイーツでは絶対に癒すことのできないものなのです(適度なアルコールやスイーツはその時だけの癒しにはなりますが……)。


目と耳と鼻と触覚で自然とランデブー

 まずはとりあえず、たまには近くの森や林の中に野ウサギさんのように跳び込んでみてください。そして腕を思いっきり上に伸ばして大きく息を吐いて思いっきり吸ってみてください。木の幹に触れて耳を押し当ててみてください。葉っぱの匂いを嗅いでみてください。小鳥の声に耳を傾けてみてください。その上に流れる雲の流れに目をやってみてください。これだけでも〝すぐれない心やストレス〟は吹っ飛んでいく気になりますよ。

 この連載は、富士山麓・朝霧高原で自然と健康の密接な関係の研究に取り組んでおられる山本竜隆先生のお話に基づいて、有坂誠人先生に取材と文章を依頼してでき上がった連載企画です。今号以降毎回つづきます。

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この記事の監修者
朝霧高原診療所 院長 昭和大学医学部客員教授 山本 竜隆(やまもと たつたか)

聖マリアンナ医科大学、昭和大学医学部大学院卒業。医師・医学博士。地域医療とヘルスツーリズムの両輪で、地域活性や自然欠乏症候群の提唱などの活動をしている。富士箱根伊豆国立公園に位置する滞在施設「日月倶楽部」では、ヨガや瞑想などのマインドフルネス、企業の健康管理者への指導など雄大な自然環境に身を置いて行う各種滞在プログラムを提供している。
[朝霧高原診療所] https://www.asagiri-kogen-clinic.com/
[日月倶楽部] https://hitsuki-club.com/


ライター有坂 誠人(ありさか まさと)

国際基督教大学(ICU)卒業。長年代々木ゼミナールで国語の講師を務め、ルポライター時代の経験を生かした講義とその温かい人柄で、受験生はもちろん、マスコミのあいだでも「受験の神様」として圧倒的な支持を受けていた。学習参考書も多数出版。退職後は一般書の著述や地方講演でも活動している。著書に「現代文速解・例の方法」「受験生活指導要領」「図解雑学 経営のしくみ」など。

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