好きな洋服が着られなくなった! 年齢によって似合う色やデザインは変わる?

|スタイリスト・長友妙子が教えるファッションのセオリー Vol.1

「20代の頃は似合っていたデザインが、最近似合わなくなった」「年々、地味な色ばかり選ぶようになった」…。洋服選びで、こんなふうに悩むことはありませんか? 洋服は、“年相応”に収めるしかないのでしょうか。女優やモデル、ビジネスエグゼクティブのファッションスタイリストとして活躍する長友妙子さんに教えてもらいます。


―そもそも、年齢によって似合う洋服が変わる原因は何なのでしょうか?

長友:似合う色やデザインが変わるのはお肌のくすみやたるみ、肩や腰回りに脂肪がつくなど、加齢に伴う見た目の変化が原因。例えば、二の腕。「若い頃には抵抗がなかったノースリーブが着られなくなった」という人はいませんか? 本当は自分が思うほど周りは注目していないのですが、二の腕についたお肉が気になれば隠したくなりますよね。でもこれは、大多数の人が年齢とともに現れる当然の変化。一見、痩せているように見えてもお肌がきれいに見えても、若い頃と全く変わらないという人はなかなかいないものです。


―ノースリーブのように、“痛い”と思われたくないから好きなデザインを諦めるという女性は多くいますが、年齢によってNGなデザインはあるのでしょうか?

長友:〇歳だからNGとか、年齢によって似合う似合わないというのは一概に言えることではありません。若い女性にしか似合わないと思われがちなパフスリーブなども、いろいろ試着してみることで似合う一着は見つかると思うんです。袖のボリュームや丈感、素材などさまざまなタイプがあるので、まずはたくさん試着してみてください。お洋服に年齢制限はありません! 人それぞれなんですよ。


運命の一着に出合うためにも必ず試着して


―年を重ねると地味な色を選びがちですが、例えばピンクなどは大人の女性にはハードルが高いものなのでしょうか?

長友:確かに、アイドルが着るようなロマンチックなデザインの洋服でピンクとなると“痛い”ですよね。でも、スタイリッシュでシャープな印象に偏るデザインであれば大人の女性でも成功しやすいんですよ。年齢問わず似合う色の幅を自ら狭めてしまっている人をよく見かけますが、同じカラーでも彩度や濃淡、素材によって発色や着たときのイメージは異なります。だからこそ、たくさん試着してみるべきなんです。「濃いイエローは似合わなかったけど、薄いイエローなら似合う」「甘い印象だったピンクも、かっこいいイメージで着られるんだ」など、新しい発見があるはずです。


―「もう若くないから…」と諦めなくていいんですね! 

長友:「似合わない」と決めつけてしまうと、せっかくのファッションの楽しみがなくなってしまいます。最近はやりの骨格診断やパーソナルカラー診断に頼りすぎる風潮も考え物。こういったものは、あくまで“参考書”として頭に入れておく方が〇。一つの視点に傾倒しすぎると、自分の主張が全くなくなってしまいますから。面倒だからとか、パッと見て「似合わなそう」と試着もせずに諦めてしまう人は少なくありませんが、4~5着試着してみると自分で判断できるものです。私がスタイリングをする時、一番重視するのが“バランス”。その人が持つ個性と洋服との相性、体型、トレンド…さまざまな角度から見て一番似合うコーディネートを提案します。でも、バランスと言われても難しいですよね…。だからこそ試着して、その姿を全身が映る鏡で客観的に観察してみてほしいんです。何着か試着して見比べてみると、どれが自分に一番似合うかというのが分かってくるはずですから。


チャレンジすることでファッションセンスが磨かれる


―たくさん着てみることで、ファッションの楽しみが広がりそうですね!

長友:好きなものを着られるという自由さがあるから、ファッションは楽しいんです! いろいろなものを着てみることで、着こなしに転換や応用が生まれます。何度も言いますが「すてきだな」と思う洋服に出合ったら、必ず試着すること。そして、全体を鏡に映し、客観的に観察することで自分に似合うものが分かってくると思いますよ。


―洋服選びに迷ったら、どうすれば良いのでしょうか?

長友:ショップスタッフではなく、友人や会社の同僚、家族など信頼できる人の意見を訊いてみてください。意外かもしれませんが、子どもの意見も参考になります。ストレートに感想を言ってくれるので、お子さんに聞いてみるのもオススメですよ。でも、他人からのアドバイスをうのみにするのはやめましょう。骨格診断やパーソナルカラー診断と同様に、あくまで参考として聞いてください。


―「夫に似合わないと言われたけれど、やっぱりこの洋服が好き」という場合は?

長友:着てください! 自分の“大好き”という気持ちが他人からのアドバイスに勝るのであれば、それは排除していいんです。ただし、自信を持って着ること。ファッションに正解はありませんから「自分が正しい」という気持ちでいれば、不思議と似合って見えるものです。



年齢とともに、似合う色やデザインが変わっていくのは当然のこと。けれど、そこで諦めてしまってはファッションの楽しみがどんどん狭まってしまいます。いろいろな洋服を試着し、自らの感性を磨くことで、新たな出合いが見つかるかもしれません。自分の年齢や役割にとらわれすぎず、もっと自由にお洋服選びを楽しんでくださいね。




\ 教えてくれたのは… /


 スタイリスト 長友ながとも 妙子たえこ

スタイリスト歴40年。ファッション誌・テレビ・広告などでファッションモデルや芸能人、著名人を中心に著名人を中心に300名以上を担当。現在は企業のブランディング、PRアドバイザー、講演活動など活躍の場を拡大、一般人に向けたパーソナルスタイリストとしても高い評価を得ている。2020年には高島屋の「サロン ル シック」とのコラボレーション「Nagatomo for Salon le Chic」のディレクションも行う。https://stylist-nagatomo.com/

 [繊細な人の仕事がうまくいくファッションのルール]

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