代替療法の種類を徹底解説! 【2】食べ物や飲み物を用いた自然療法
西洋医学による医療と代替医療を統合させて行われるのが統合医療。代替療法は、次の5つに分類できます。
1. 生活環境や人間関係を改善する療法
2. 食べ物や飲み物を用いた自然療法
3. 体を動かす療法
4. 主に心に働きかける香りやイメージ療法
5. 直接、体に働きかける手技療法(徒手療法)
前回は「生活環境や人間関係を改善する療法」を紹介しましたが、今回は「食べ物や飲み物を用いた自然療法」について紹介しましょう。
【食べ物や飲み物を用いた自然療法】
- 食養生
- マクロビオティック
- 漢方薬
- ハーブ
- ホメオパシー
- 栄養補助食品(サプリメント)
食養生
「食養生」とは、食べ物で生命を養う(健康を維持する)という中国医学の基本概念の一つ。対してあるのが「食療=薬膳」で、普段は食養生を心掛け、体の不調を感じたら薬膳でバランスを整えるというのが中医学の基本的な考えになります。食養生の要点は、次の通りです。
- 季節の穀物、野菜、果物など新鮮な食べ物をバランス良く取ること。
- 食べ過ぎに注意し、よくかんで、心穏やかに味わうこと。
- 食は健康・長寿の基本であることをよくわきまえること。
マクロビオティック
「陰陽の法則」に基づいた穀物菜食中心の食生活で、具体的には次の3つを基本とします。
- 玄米、精製しない小麦粉、皮のついた野菜など季節の素材をまるごと調理。主食の穀物を5割とすれば、副食の野菜や海藻が2~3割、魚介類が中心の動物性食品が0~1割を理想とする。
- 陽性の食物は体を温め、陰性の食物は体を冷やすので、個々の体質や季節に応じて陰陽のバランスを図る。
- 感謝してよくかんで食べる。
マクロビオティックの基本である無農薬の穀物、旬の野菜、海藻、伝統製法のみそ、しょうゆ、ごま油、自然塩などを使ったヘルシーでナチュラルな食事を続けることで、記憶力向上や認知症予防にも効果的であるといわれています。
漢方薬
中国で二千年以上の年月をかけて生み出された漢方医学の一部で、個々の症状に合わせて生薬を組み合わせた薬方(処方)です。
植物の根や茎、木の皮や根など100種類以上ある生薬の中から少ない場合でも5~6種類、多い場合には10~20種類以上を配合します。病名だけで一律に診断せず、一人ひとりの体質や病気の原因を見極めがながら総合的に判断するという観点では、「オーダーメード医療」であるといえます。 また、漢方薬の根本にあるのは本人の自然治癒力を高めて体を整えること。そのため、西洋医学では対処しにくい半健康状態から慢性疾患に至るまで幅広い症状に対処でき、体質改善につながるので予防医学としても大変有効だといえます。
ハーブ
自然治癒力への働きかけを目的に、自然薬として用いるハーブのことを「メディカルハーブ」(植物療法)と呼びます。代替医療の中でもエビデンスの面で医療従事者の理解を得やすく、欧米の代替医療の中で不可欠な分野として認知されています。
メディカルハーブの作用は、次の通りです。
- 生体防御機能の向上
体の免疫力を高める働きによって、心身症や婦人科系の病気に有用。 - 抗酸化作用
人体に有害な活性酸素を抑制し細胞の老化を防ぐ働きにより、生活習慣病や介護の領域に対して有用。
メディカルハーブの活用法は多様で、エッセンシャルオイルを用いるアロマテラピー以外では、次の4つの剤形があります。
- 薬剤…ハーブを熱湯抽出したもの(ハーブティー)を服用します。
- チンキ剤…アルコール抽出したハーブを、直接または適量の水とともに服用します。
- 錠剤・カプセル…ハーブそのものや抽出成分を製剤にしたもので、ハーブサプリメント
として服用します。 - その他…湿布、軟こう、パック剤、蒸気吸入、フェイシャルスチームなどに活用できま
す。 メディカルハーブには品質保持や有効成分の特定、医薬品との併用の相互作用など検討を要する課題もあります。しかし、正しい使用方法で用いれば副作用の心配はなく、人体に穏やかに作用して心身の機能を活性化することができます。
ホメオパシー
植物や鉱物などの成分を希釈して用いる自然療法で、200年以上の歴史を持つドイツ発祥の伝統療法。ホメオパシーによる治療は欧米やインドなどを中心に世界各国で行われ、日本でも治療を受けられる機関が存在します。
ホメオパシーに用いられる薬を「レメディー」といい、植物、鉱物、動物など自然界に存在する物から作られ、その種類は500種類以上にも及びます。本人のバイタルフォース(生命エネルギー)に働きかけ、自然治癒力を最大限引き出す作用があります。
ただし、現代医学と全く異なるホメオパシーには専門性が問われます。そのため、臨床においては通常「ホメオパス」と呼ばれる専門の治療家、またはホメオパシーを専門的に学んだ医師による最適なレメディーを選び出すことが大切になります。
栄養補助食品(サプリメント)
食生活での栄養のバランスの崩れを補うことを目的とした食品。健康に不安のある現代人にとって、サプリメントは副作用をもたらす可能性が低く手軽に入手しやすいものですよね。しかし、食品アレルギーが起こる可能性や体質に合わないこともあるので、配合成分を十分に確認することは忘れてはいけません。また、多量摂取によって体に弊害をもたらすこともあるのです。 代替医療の中では、医師の判断と指導によって医薬品を補う目的や医薬品に替わるものとして高品質なサプリメントを患者に使用します。健康維持のために用いるのはさほど問題ないにしても、症状改善のためにサプリメントを飲む場合は専門の薬剤師や医師に相談することをお勧めします。
サプリメントやハーブティー、漢方薬など「食べ物や飲み物を用いた自然療法」は、読者の皆さんにとっても身近なものが多かったのではないでしょうか。ただし、今回紹介したのは全て代替療法として用いられる治療の一つ。専門家や医師が治療として行うことで、効果と安全性がより信頼できるものであるということは覚えておきたいところですね。
この記事の監修者
朝霧高原診療所 院長 昭和大学医学部客員教授 山本 竜隆
聖マリアンナ医科大学、昭和大学医学部大学院卒業。医師・医学博士。地域医療とヘルスツーリズムの両輪で、地域活性や自然欠乏症候群の提唱などの活動をしている。富士箱根伊豆国立公園に位置する滞在施設「日月倶楽部」では、ヨガや瞑想などのマインドフルネス、企業の健康管理者への指導など雄大な自然環境に身を置いて行う各種滞在プログラムを提供している。
[朝霧高原診療所] https://www.asagiri-kogen-clinic.com/
[日月倶楽部] https://hitsuki-club.com/
ライター 濱岡 操緒
大学卒業後、大手ゲーム会社に就職。広報宣伝部にて主に社内報や広報誌などの編集主幹を務める。退職後は母親向けの媒体、ウエディング関連の媒体などを手掛ける編集プロダクションに所属。現在はフリーランスとして書籍・雑誌・WEBメディアなどの編集・執筆、撮影ディレクションなど幅広く活動中。プライベートでは1児の母。最近の健康習慣は、ミトコンドリア活性化。