自分を知ることから始めよう! “オーダーメード”が健康への第一歩に

病院で医師の診察を受ける、薬局で薬を購入する、インターネットで健康について気になる情報を検索する、サプリメントなどの健康法を利用する…。このように、人はさまざまな方法で健康を保とうとします。しかし、“健康”の意味を改めて考えたことはあるでしょうか。真の意味での健康とは、病気の有無ではなく、心も体も、自分を取り巻く状況も良い状態であることだと私は考えます。

健康には、ミクロとマクロの視点で考える必要があります。マクロの視点とは、感染症をはじめとする人類全体の健康を損なう事態から身を守ること。ワクチンや治療薬などの治療法の確立、公衆衛生の啓発などによる予防が主になります。一方、ミクロの視点での健康は“個”のもの。人によってそれぞれ異なる遺伝や体質、生活習慣に沿って健康を考え、目指すことを意味します。

インターネットやテレビ、雑誌などのメディアで流れる健康法の多くは、“ほとんどの人に当てはまる”マクロの健康法です。しかしそれは、全ての人に当てはまるというわけではありません。ミクロの視点で考えると、人によっては不向きな健康法もあるのです。病気の治療についても同じで、処方された薬でアレルギー反応が出たり、ワクチンで重篤な副反応が出てしまったりするケースは、マクロの健康がミクロの健康につながらない代表例といえるでしょう。 マクロの健康を知ることは、もちろん必要です。しかし、それよりも“自分はどうなのか”を考えるミクロの健康に目を向け、それに従うことがより重要なのです。

万人に共通する健康リスクはあるけれど、万人に共通する健康法はある?


果たして、人類共通の健康法というものはあるのでしょうか。その前に、万人に共通する健康リスクについて考えてみましょう。

  • 喫煙
    喫煙には脳を活性化させたり、ストレスを解消してリラックス効果をもたらしたりといったいくつかのメリットがあるのは確か。しかし、それに対するデメリットはあまりにも大きすぎます。
    ・がんや脳卒中、虚血性心疾患などの循環器疾患
    ・慢性閉塞性肺疾患や結核などの呼吸器疾患
    ・2型糖尿病
    ・歯周病
    など、喫煙が原因で生じる病気の中には死につながるものがいくつもあります。さらに、女性の場合は不妊になりやすいだけでなく前置胎盤、胎盤異常、早産、低出生体重や乳児突然死症候群(SIDS)を引き起こす可能性も指摘されています。
  • 化学物質
    今の時代、至るところに存在する化学物質。空気中には排気ガスなどの有害物質が含まれ、野菜には農薬、肉や魚には抗生物質などの薬品が残留していることも…。加工食品ともなれば合成調味料、酸化防止剤や着色料など数多くの食品添加物が含まれています。また、衣服の化学繊維や洗濯用洗剤でアレルギーを起こす例はまれではありません。さらに、住居にも化学物質が放出される建材が使用されることがあり、安全とは言い難いものがあります。
  • 睡眠
    生活が夜型に傾き、慢性的な睡眠不足など睡眠の質が低下している現代人。睡眠不足は生活習慣病のリスクを高め、かつ症状を悪化させる原因となります。また、不眠症や睡眠時無呼吸症候群といった睡眠障害も、生活習慣病としての側面が強くあるとされています。

では次に、人類共通の健康について考えてみましょう。疫病や紛争など命に危険が及ぶ可能性のない社会であることを前提に、病気がなく、社会環境に不安がなく、ストレスのない状態が全ての人に共通する健康な状態でしょう。疫病や紛争のない状態は個人が目指せることではありませんが、病気を避けること、ストレスを避けて生きることはそれぞれの個人で実現可能かもしれません。しかし、そのための方法となると、これはまさに千差万別。「この方法なら、絶対に効果がある」というものはありません。

全人的医療!? 一人ひとりの健康を目指す「統合医療」とは


全ての人に当てはまる健康法はない。だからこそ、いま求められるのが「統合医療」へのアプローチです。統合医療とは何なのかを紹介する前に、まずは「西洋医学」「伝統医療」「民間療法」について簡単に説明しましょう。

  • 西洋医学 検査のデータや薬品による治療など、それぞれの症状に対応していく「対症療法」。
  • 伝統医療…気候や風土、その地に住む人の体質に合わせて発展してきたもので、中国の漢方医学、インドのアーユルヴェーダ、イギリスのホメオパシー、日本の漢方や鍼灸などがそれに当たる。
  • 民間療法…アロマセラピー、整体、食事療法など民間に伝わる療法。

伝統医療と民間療法は、西洋医学による治療を補完する「代替医療」と呼ばれます。症状を抑えることよりもなぜ病気になったのかに着目し、その原因を取り除いて根治を目指す「原因療法」です。

西洋医学と代替医療を組み合わせ、一人ひとりに適した治療法を提供する医療の在り方が、「統合医療」です。統合医療は「医療モデル」「社会モデル」「生活モデル」という3つのアプローチ法で実施されます。

  • 医療モデル…病院や診療所などでの医師による治療。
  • 社会モデル…日常生活の場や人とのつながりを重視し、患者本人を中心とした予防医療と健康増進を目的とする。
  • 生活モデル…患者本人の価値観や個性、思想に沿った医療を検討・実施。患者に自分のことや病気に対する思いを語ってもらうことから始まる。

このように、統合医療ではさまざまなアプローチで患者の健康に向き合いますが、この3つのモデルに共通するのが「それぞれの人に合わせたオーダーメードの医療を目指す」ということ。統合医療は病気の治療のみならず生活の質(QOL=Quality Of Life)を大切にした医療を実現できるのではないかと期待されています。

この記事の監修者
朝霧高原診療所 院長 昭和大学医学部客員教授 山本 竜隆(やまもと たつたか)

聖マリアンナ医科大学、昭和大学医学部大学院卒業。医師・医学博士。地域医療とヘルスツーリズムの両輪で、地域活性や自然欠乏症候群の提唱などの活動をしている。富士箱根伊豆国立公園に位置する滞在施設「日月倶楽部」では、ヨガや瞑想などのマインドフルネス、企業の健康管理者への指導など雄大な自然環境に身を置いて行う各種滞在プログラムを提供している。
[朝霧高原診療所] https://www.asagiri-kogen-clinic.com/
[日月倶楽部] https://hitsuki-club.com/


ライター 濱岡 操緒(はまおか みさお)

大学卒業後、大手ゲーム会社に就職。広報宣伝部にて主に社内報や広報誌などの編集主幹を務める。退職後は母親向けの媒体、ウエディング関連の媒体などを手掛ける編集プロダクションに所属。現在はフリーランスとして書籍・雑誌・WEBメディアなどの編集・執筆、撮影ディレクションなど幅広く活動中。プライベートでは1児の母。最近の健康習慣は、ミトコンドリア活性化。

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