“健康のための習慣”はやめるべき!? 全ての人に当てはまる健康法は存在しない

テレビや新聞、雑誌といったメディアの情報に加え、24時間知りたいことをインターネットで調べることのできる今の時代、人はかつてないほど多くの情報を手に入れています。その中でも多くの人がよく触れているのが、健康に関する情報ではないでしょうか。しかし、情報の真偽についてはどうでしょうか。手に入れた情報全てが、正しいとは限りません。

健康情報のアンテナを高く張り、新しい健康法やサプリメントが登場すると試さずにいられないという人を多く見かけます。健康に関する情報をたくさん持っているため、ちょっとした専門家のように見えることさえあるでしょう。

しかし、健康に関する情報や知識が多ければ健康に近づけるというわけではありません。逆に、良かれと思って試した健康法で体を痛めつけているケースもあるのです。万人に当てはまる健康法は存在しません。誰かにとっては体調が良くなる健康法だとしても、自分にとっては逆効果、かえって具合が悪くなってしまったという例は皆さんが想像する以上に多いはずです。 健康を目指すには、全ての人に共通する守りたいこと、一人ひとり異なることがあります。それを混同すると、健康を害することにもなりかねません。

病を治すための薬が健康を害する「ポリファーマシー」の真実

「ポリファーマシー」という言葉を知っていますか? 「Poly(多くの)」と「pharmacy(調剤)」を合わせた造語で、一人の患者が多数の薬を服用することを指します。ポリファーマシーについてはそれぞれの体質や生活、環境、病態によって変化するため、具体的な定義はありません。ただし、現時点では服薬数が5種類以上で転倒リスクが高まり、6種類以上で薬物有害事象が急増するというデータがあります。そして、服薬数が3種類以上の組み合わせに関する科学的な安全性は提示されていないにもかかわらず、75歳以上の約4分の1が7種類以上、4割が5種類以上の薬剤を処方されているのです(厚生労働省「高齢者の医薬品適正使用の指針」より)。

ポリファーマシーを防ぐには、服用している薬のことを知り、何が処方されているのかを把握しておくことが大切です。また、薬を飲んで異変が起きた場合は医師や薬剤師に伝えることも忘れてはいけません。活用が推奨されている「お薬手帳」は、ポリファーマシーを防ぐことにも役立っていることは覚えておきましょう。

健康に良いとされるサプリメントが内臓を傷つけることも

現代人が抱える“病院に行くほどではない健康上の悩み”は、挙げればキリがありません。また、痩身やアンチエイジングを目指した“より良い状態”になりたい願いもあり、美と健康への欲望に際限はありません。そして、そういった不安や悩み、願いを受け止めるのがサプリメントです。

栄養成分が凝縮されているだけのサプリメントであれば、薬と違って何種類飲んでも問題ないと考える人は多いかもしれません。しかし、サプリメントの摂取により肝障害を発症するケースが増えているのは知っていますか? 体に入ったものの多くは肝臓に入り、無毒化されて尿や便、汗と一緒に排出されます。しかし、異物が大量に入ると肝臓の負担が大きくなり、肝機能障害を起こすのです。サプリメントの成分にも気を付けなければなりません。カプセルの材料や錠剤にするための原料、成形の向上や服用を容易にするための賦形剤、味を良くするための甘味料や香料など、肝臓に負担がかかるのも無理はありません。

サプリメントには、1回の食事では取れない大量の栄養素が詰め込まれています。食生活に不安のある人にとっては、合理的に栄養が摂取できるため魅力的に感じるかもしれません。しかし、考えてみてください。それがいかに不自然なことであるのかということを…。

ヒーリングミュージックが脳疲労を招くことも

きちんと眠ることは健康への第一歩であり、睡眠を改善するだけで不調が治るケースもたくさんあります。睡眠に関する悩みを抱える人は多く、「なかなか寝付けない」と感じる場合によく取り入れられるのがヒーリングミュージック。自然の音やクラシック音楽などを聴くことにより、脳波からアルファ波が発せられてリラックス状態に導くことができます。

穏やかな音楽を聴いて脳の興奮を鎮めるのは、スムーズに眠りにつくためには効果的。しかし、この方法を用いても目覚めがスッキリしないと感じることがあるのです。これは、入眠後も音が鳴りっぱなしの状態であることに原因があると考えられます。寝ている間も脳が音をキャッチし続け、休まることがないため疲れが残ってしまうのでしょう。

ヒーリングミュージックで入眠がスムーズになるのであれば、それをやめる必要はありません。ただし、アルファ波が発生する穏やかな音楽であっても、脳への刺激になるということは知っておく必要があります。ある程度時間が経ったら再生が止まるなどの設定で、脳の疲労を防ぐのがオススメです。

確実といわれる減量方法で体調を崩す

世代問わず多くの人の注目を集める健康情報といえば、ダイエットではないでしょうか。さまざまなダイエット法がある中でここ最近、確実な減量方法として定着しつつあるのが「糖質制限」。米飯やうどん、パスタなどの糖質の摂取量を抑えることで体重を落としていく方法です。

しかし、エネルギー源であるブドウ糖の急激な不足によって、元気が出なかったり体調が悪くなったりするケースがあることは知っているでしょうか? 確かに、糖質制限で減量に成功した人は多くいます。けれど、人はそれぞれ体質も生活習慣も異なります。誰かがその方法で痩せることができても、自分も同じ結果が得られるとは限らないのです。

この記事の監修者
朝霧高原診療所 院長 昭和大学医学部客員教授 山本 竜隆(やまもと たつたか)

聖マリアンナ医科大学、昭和大学医学部大学院卒業。医師・医学博士。地域医療とヘルスツーリズムの両輪で、地域活性や自然欠乏症候群の提唱などの活動をしている。富士箱根伊豆国立公園に位置する滞在施設「日月倶楽部」では、ヨガや瞑想などのマインドフルネス、企業の健康管理者への指導など雄大な自然環境に身を置いて行う各種滞在プログラムを提供している。
[朝霧高原診療所] https://www.asagiri-kogen-clinic.com/
[日月倶楽部] https://hitsuki-club.com/


ライター 濱岡 操緒(はまおか みさお)

大学卒業後、大手ゲーム会社に就職。広報宣伝部にて主に社内報や広報誌などの編集主幹を務める。退職後は母親向けの媒体、ウエディング関連の媒体などを手掛ける編集プロダクションに所属。現在はフリーランスとして書籍・雑誌・WEBメディアなどの編集・執筆、撮影ディレクションなど幅広く活動中。プライベートでは1児の母。最近の健康習慣は、ミトコンドリア活性化。

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