日本における統合医療の歩み(Ⅱ)

日本人の代替医療に対する関心は非常に高く、その利用率も年々上昇しています。その背景にあるのは、現代西洋医学の限界、セルフメディケーションの意識向上、有効な代替医療を積極的に利用したいという利用者側のニーズがあります。その一方で、政府や医療サービスの提供者側にとっては、医療費の削減、費用対効果の有効な治療法の導入、科学的有効性や有害性の確認、混乱する代替医療分野の把握と整理、悪徳療法の排除などの課題があります。

しかしながら日本の医療機関の多くは通常医療のみで、医療現場への代替医療の導入は極めて遅れているのが現状です。

真の統合医療構築を目指し設立された「統合医療ビレッジ」


代替医療の取り組みと統合医療の構築に向けた始動が急務の日本の医療において、2003年に設立されたのが「統合医療ビレッジ」。統合医療ビレッジでは現代西洋医学の他、東洋医学(漢方・鍼灸・食養他)、ホメオパシー、アロマテラピー、免疫療法、音楽療法、各種ハーブ・健康食品などの医療方法や手技を準備しており、統合医療ドックや各種健康指導など、さらには医療有資格者を対象とした教育機関である「統合医療塾」の準備・サポートも行っていました。医療機関としては保険診療と自由診療の二本立てで、健康生活者や患者の多様なニーズに応えるため、より望ましい統合医療の構築に向けて日々尽力していました。

私たちが目指す統合医療の構築には、次の三つの段階があると考えます。

<第一段階>

基本理念を共有する各医療分野から集まった医療従事者および医療と教育を実施する現場の確保。

<第二段階>

個々のケースに最適なプランを提供するためのノウハウ(統合医療システム)の構築および、臨床・教育・経営および社会的貢献としての成功。

<第三段階>

確立されたシステムの普及と人材の輩出。

ビレッジの開設は、この第一段階から第二段階への移行にすぎません。

統合医療のあるべき姿とは、まず個人個人の予防や個性、健康状態を把握し、さらに社会的背景や健康観なども考慮することから始まります。そして、現代西洋医学を重要視する一方で、他の医療体系や手技なども念頭に入れた健康増進・疾病の予防指導および診療を行うのです。

統合医療に必要な患者への4つの指導方法


統合医療において医療従事者が患者に指導する手段や方法はさまざまですが、私は少なくとも次の4つの方法を意識して使い分けることが必要だと考えています。

  1. 自分の成功体験を語る
    患者の治癒効果を高めていくためには、治療計画に沿って適時適切な処方を施していくことが基本。それを患者に理解してもらうために、場合によっては医療従事者が自分の成功体験を引き合いに出しながら、その治療法が安全性や有効性の高いことを説明することがあります。それによって患者は信頼感と安心感を得、治療への取り組み動機が促されます。あくまで患者自身の動機付けが大切で、症状や経過、予後の質問や疑問に対しても本人が納得し、自ら取り組もうとする姿勢を引き出すことがポイントです。

  2. 同じ境遇の人の成功例を語る
    場合によっては、患者と同様の症状や経過を経ている別の患者の成功例を挙げながら、不安感や抵抗感を和らげていくことも重要。期待通りにいかなかったケースに意識を奪われることがないよう、同じ境遇に置かれた人がどれだけうまくいっているかを具体的に示しながら、本人の本能的な治癒力が100%活性化するように働きかけることが重要です。心身が弱っていると特に否定的な話に心が揺らいでしまいますが、そうではなく、実際に高い確率で成功している同様のケース(症例)を知ってもらい、希望を持ってもらうことが大切です。

  3. 信頼できる専門家からの意見・指導を仰ぐ
    場合によっては、他の医療機関や医師にセカンドオピニオンを求めることも大切な選択肢。他の信頼できる医療従事者や代替療法家などの見解を参考にして、本人や家族が自分たちの納得のいく方法を慎重に見極めること。そして、そのような患者サイドの選択を担当医が公平中立な立場で尊重すること。このような医療従事者の理解と精神的支援は患者や家族にとって、大変大きな心の支えとなります。

  4. 生理学的データ・科学的な情報を示す
    やはり、患者の検査データなどの情報開示は基本。それ以外にも、当該疾患に関する科学的な関連情報も患者にとっては大変参考になり、できる限り提示し、分かりやすく説明してあげることが大切です。もちろん、こうしたデータベースは医療提供者側にとっても基礎的な資料であり、チーム医療には不可欠な要素となります。

以上のような体制と科学的な根拠付けが伴うことで、患者は“自分の問題”として積極的に治療に取り組むことができるようになるのです。

次回、日本が取り組むべき統合医療の課題についてお話ししましょう。

この記事の監修者
朝霧高原診療所 院長 昭和大学医学部客員教授 山本 竜隆(やまもと たつたか)

聖マリアンナ医科大学、昭和大学医学部大学院卒業。医師・医学博士。地域医療とヘルスツーリズムの両輪で、地域活性や自然欠乏症候群の提唱などの活動をしている。富士箱根伊豆国立公園に位置する滞在施設「日月倶楽部」では、ヨガや瞑想などのマインドフルネス、企業の健康管理者への指導など雄大な自然環境に身を置いて行う各種滞在プログラムを提供している。
[朝霧高原診療所] https://www.asagiri-kogen-clinic.com/
[日月倶楽部] https://hitsuki-club.com/


ライター 濱岡 操緒(はまおか みさお)

大学卒業後、大手ゲーム会社に就職。広報宣伝部にて主に社内報や広報誌などの編集主幹を務める。退職後は母親向けの媒体、ウエディング関連の媒体などを手掛ける編集プロダクションに所属。現在はフリーランスとして書籍・雑誌・WEBメディアなどの編集・執筆、撮影ディレクションなど幅広く活動中。プライベートでは1児の母。最近の健康習慣は、ミトコンドリア活性化。

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