不調を放置している人は気付くべき! 健康をビジネスに置き換えて考えると…?

どんなに具合が悪くても過労やストレスが原因だと思うと、「大したことはない」と放置してしまう…。もしかするとそれは、日本人ビジネスパーソンの習性かもしれません。でも、もしあなたが「体」という総合商社のオーナーだったらどうしますか?

総合商社はさまざまな部門がそれぞれに活動し、取引を行うことで業績を上げ、企業活動を維持します。オーナーはそれぞれの部署の状態を正確に把握した上で人事を刷新する、設備を新しくする、取引先を変えるなど必要な措置を講じなければなりません。場合によっては部署を縮小したり、第一線で活躍する社員を休ませたりといった思い切った手立てが必要になることもあるでしょう。

体は消化を司る胃や腸、飲んだアルコールの分解や有害物質の解毒を担当する肝臓、呼吸を行う肺や全身に血液を巡らせて生命を維持する心臓、さまざまな情報処理を行う脳、ウイルスなど外部からの侵入物と戦う免疫系統、体の働きを整える自律神経など、それぞれが違った働きをして健康を維持しています。総合商社に置き換えると、“それぞれの部署が専門的な仕事に取り組み、業績を上げている”状態と同じです。 企業の業績に上がり下がりがあるように、体調が良いときもあれば悪いときもあります。そして、企業の業績が下がり始めたときにはなんらかの手立てを講じる必要があるように、体調が悪くなったときには何らかの対策が必要です。それを責任持って行うのが、オーナーの役割ではないでしょうか。体調の悪さを「仕方がない」「時間がない」と放置している人は、ある部署が取引先と不穏な動きをしているのに「まあ、大丈夫だろう」と放っておくようなもの。大問題になってから慌てても、手遅れです。

健康のために取り入れるのは「PDCA」のみならず「OODA」


体を会社に、健康維持をビジネスに置き換えて考えると、早めの対応がどれほど重要か分かります。次に、具体的な進め方を見ていきましょう。

ビジネス成功のためには日々の売り上げ確保を前提に、最終的な目標を定めることが必要です。健康も同じで、日々の体調を整えることが大前提。その上で最終的に目標とすべき自分にとっての最高で最適、かつ最善の状態である「オプティマムヘルス」を定めるのです。

最終目標を設定したら、次に考えるのは“どうすれば今の状態をより良いものにすることができるか、体調を改善できるか”ということ。ここで登場するのが、「PDCAサイクル」です。

【PDCAサイクルとは】

「Plan(計画)」「Do(実行)」「Check(検証)」「Action(改善)」の頭文字を取って作られた言葉。この4つの段階を繰り返すことで、業務が継続的に改善できるといわれる。

これを健康改善に取り入れると

P…どのような治療、または健康法が適しているかを考える

D…計画に沿って治療、または健康法を実行する

C…その方法が自分に合っているか、効果が出ているかを検証する

A…計画通りに行えていないこと、効果が出ていないことを調べて改善する

となり、この流れを繰り返しながら最も自分に合った方法にたどり着くことを目指します。

しかし、PDCAサイクルには時間がかかりすぎるというデメリットがあります。ビジネスの現場でも指摘され、この方法は時代遅れとまでいわれるようになっています。そこで注目を集めるようになったのが「OODA(ウーダ)ループ」です。

【OODAループとは】

「Observe(観察)」「Orient(状況判断)」「Decide(意思決定)」「Act(行動)」の頭文字を取って作られた言葉で、刻々と変化する状況に臨機応変に対応するための手法。

これを健康改善に取り入れると

O(観察)…今の体調を客観的に見る

O(状況判断)…観察した結果を分析し、自分の体の今の状況を知る

D(意思決定)…何をすれば良いか、できるだけ具体的に決める

A(行動)…決めた方法を実行する

PDCAサイクルのように試行錯誤を繰り返して最善の方法を見つけるのではなく、そのときにこれが一番良いと思った方法をすぐ取り入れることで、最大の効果を引き出すことを目指すスピーディさが特徴です。例えば頭がボーッとする症状があるとしましょう。ここ数日の生活を振り返ったところ睡眠不足が続いていることが分かったため、きちんと睡眠を取ることがベストと判断し、休暇を取って何もせず家でゆっくり過ごします。一方、「風邪かもしれないので薬を買って飲んでみよう」「薬は効果がなかった」「では次はマッサージを受けてみよう」とさまざまな方法を試そうとするのがPDCAの考え方。時間がかかるばかりでなく、問題の本質からそれてしまう可能性もあります。 あまりにも情報があふれ、迷いが生じやすい時代。だからこそ必要な視点が、オプティマムヘルスです。そして、オプティマムヘルス実現のために必要なのが自分の体調や状況をきちんと観察した上で、何をすれば良いかを決め、すばやく実行すること。「何となく不調だけれど、時間がないから放置している」という忙しいビジネスパーソンこそ、自分の健康をビジネスに置き換えて考えてみてください。きっと、その重要性に気が付くはずです。

ESGを個人に当てはめて考える


もう一つ、実践してほしいのが「ESG」という観点。気候変動や人権問題など、世界的な課題が山積される中、企業が生き残るためにはESGに配慮した取り組みが不可欠。ESGとは、持続可能な社会を実現するため、企業が長期的に成長するために重要な観点を示しています。

E(環境)…生き方と、自分を取り巻く環境を考える

S(社会)…地域社会と積極的に関わりを持ち、貢献する

G(内部統括)…個人の心身を理解する

ESGの観点は、今の自分の状態を知るために有効です。健康は治療を行って得られるものでもなければ、サプリメントを使用して維持するものでもありません。

E…自然とともにあること、余分なもの・不自然なものを断捨離してより良い環境を目指すこと

S…自分が暮らす地域を大切にし貢献して守ること

G…自分の心と体が今どうなっているかを常に把握した上で、最善の状態を目指すべく行動すること

この3つの実現を心掛けていれば、余計なことをせずとも自然に健康を手に入れることができるのではないでしょうか。

この記事の監修者
朝霧高原診療所 院長 昭和大学医学部客員教授 山本 竜隆(やまもと たつたか)

聖マリアンナ医科大学、昭和大学医学部大学院卒業。医師・医学博士。地域医療とヘルスツーリズムの両輪で、地域活性や自然欠乏症候群の提唱などの活動をしている。富士箱根伊豆国立公園に位置する滞在施設「日月倶楽部」では、ヨガや瞑想などのマインドフルネス、企業の健康管理者への指導など雄大な自然環境に身を置いて行う各種滞在プログラムを提供している。
[朝霧高原診療所] https://www.asagiri-kogen-clinic.com/
[日月倶楽部] https://hitsuki-club.com/


ライター 濱岡 操緒(はまおか みさお)

大学卒業後、大手ゲーム会社に就職。広報宣伝部にて主に社内報や広報誌などの編集主幹を務める。退職後は母親向けの媒体、ウエディング関連の媒体などを手掛ける編集プロダクションに所属。現在はフリーランスとして書籍・雑誌・WEBメディアなどの編集・執筆、撮影ディレクションなど幅広く活動中。プライベートでは1児の母。最近の健康習慣は、ミトコンドリア活性化。

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