代替療法の種類を徹底解説! 【3】体を動かす療法
西洋医学による医療と代替医療を統合させて行われるのが統合医療。代替療法は、次の5つに分類できます。
1. 生活環境や人間関係を改善する療法
2. 食べ物や飲み物を用いた自然療法
3. 体を動かす療法
4. 主に心に働きかける香りやイメージ療法
5. 直接、体に働きかける手技療法(徒手療法)
今回は、「体を動かす療法」について紹介しましょう。
【体を動かす療法】
- ダンスセラピー
- 気功
- 太極拳
- 運動療法
ダンスセラピー
ダンスや体の動きを通して心身の統合を促し、精神的な障害を癒やす方法。正式には「ダンス・ムーブメント療法」と呼ばれ、日本では現在、病院や福祉施設、デイケア等で行われています。
ダンスセラピーの基礎には、「心と体は相互に関連し合い、その統合されたものが個としての存在である。従って体を通してその心にアプローチできるし、また体を通して他社との交流も可能である」という考え方があります。
ダンスセラピーに一定の方法があるわけではなく、ダンスセラピストによって、あるいは対象となる個人や集団に応じてさまざまなダンスや動作が施されます。対象となるのは健常者から心身症、神経症、うつ病、分裂病、人格障害、心身障害児、高齢者、被虐退者やPTSDなど幅広い層に施されます。統合失調症(分裂病)や心身症、摂食障害の人などには特に効果的だといわれています。
気功
中国四千年の歴史の中で培われてきた「調心(心の調整)」「調息(呼吸の調整)」「調身(姿勢や動作の調整)」を基本とする心身の修練法。
気功には中国だけでも三千流派といわれるほど数多くの流派があり、主に武術気功(硬気功)と医療気功(軟気功)の二つに分けられます。どちらも腹式呼吸や緩やかな動作などを使って自らの「気」(生命エネルギー)を活性化する「内気功」を基本とし、訓練を積んだ人は他者を癒やしたり技をかけたりといった「外気功」ができるようになります。
【内気功】
腹式呼吸をしながら丹田(へそ下3cm)に気を集め、気が全身に巡るように訓練を行います。意識的に体内の気をコントロールできるようになると、座ったり横になったりしたままでも、歩きながらでも気が巡って気力が充実し、心身の機能が活性化して物事に集中することができるようになります。
【外気功】
外気功は熟練した気功家や武道家が気を発して、相手の病を癒やしたり技をかけたりするもの。
気功には、遠赤外線効果やリラクセーション効果があると考えられています。また、こんな報告もあります。外気功をがん患者に施したところ、照射後のストレスに関係する血液の数値が減少したというのです。ストレスは体のあらゆる部位に悪影響を及ぼし、病気の原因となるものです。そういった意味では、気功は予防医学の観点からも非常に有効であるといえるでしょう。
太極拳
太極拳は、内気功の一つ。腹式呼吸と独特の型に基づく運動によって心と体をバランス良く整えることを目的とし、医療や保健体育分野にも取り入れられています。
健康法としての太極拳は、次の三位一体が実践の極意だとされています。
- 心が健康を作り、完全にリラックスすることで全身の経路が開かれ、気の流れが良くなって血液の流れを導く。
- 息をゆっくり吸いながら「意」を持って「気」を丹田(へそ下3cm)に導く深呼吸を用いる。
- 体から力を抜き、手の指先、足の指先まで気血を巡らしながら鶴が舞うように柔らかくバランスを取って体を動かす。
太極拳には体の各器官の機能を促進すると同時にストレスを解消し、脳の神経細胞を活性化する効果が期待できます。また、ジョギングや水泳など他の有酸素運動と同様の効果があると考えられ、感染防御脳を高めるのに最適な運動だともいえます。
運動療法
体の機能回復や健康維持のために行う運動のこと。適度な運動は虚血性心疾患や高血圧、糖尿病、肥満、骨粗しょう症、結腸がんなどのリスクを減らし、生活習慣病のない健康な生活につながります。
ただし、運動療法を安全に行うためには基本的に体調が良好であることが前提にあります。また、中年以降(40~50歳以上)の人はなるべく運動負荷試験をしてから運動療法を開始する方が良いでしょう。
【運動療法を行う条件】
- 胸痛、動悸、息切れ、めまい、失神、腰痛、関節痛などの自覚症状がないこと。
- 心臓病、安静時心電図異常、腎臓病、肝臓病などの病気がないこと。
- 関節や骨の障害がないこと。
- 糖尿病や高血圧症などの生活習慣病が軽症であること。
日頃運動していない人は、1~2週間かけて少しずつ体を動かすようにします。運動の前後に、準備体操や整理体操を十分に行うことも大切です。“最高にきつい(これ以上は不可能)”と感じる運動を100%とした場合、始めは30~40%の運動からスタートして、生活習慣病の予防・治療のためには40~60%程度の運動が良いと考えられています。1回の運動時間としては最低10分以上、1日あたり20分以上実施することが望まれます。週に一度まとめて実施するより、2日以上かけて実施する方が体にも無理がかからず、運動習慣を確立する上で望ましいでしょう。
一般的な運動療法としては、歩行、ジョギング、なわとび、水中歩行、水泳、サイクリング、エアロビクスなどのゆっくりと長くできる有酸素運動が適しています。毎日の運動は生活習慣病を予防するだけでなく、憂鬱な気分を吹き飛ばしてリフレッシュしたり、高齢者が寝たきりになるのを予防する効果があることも知られています。
今回紹介した代替療法をみると、健康を維持するためには(適度な)運動も大切だということがよく分かります。ジョギングやウオーキングなどを既に習慣化している人は、どんなふうに体に好影響を与えるのかを意識しながら行うと、より効果が得られるはずです。また、「体を動かす療法」によって確実な健康効果を得たいのであれば、専門家や医師に相談した上で行うことをお勧めします。
この記事の監修者
朝霧高原診療所 院長 昭和大学医学部客員教授 山本 竜隆
聖マリアンナ医科大学、昭和大学医学部大学院卒業。医師・医学博士。地域医療とヘルスツーリズムの両輪で、地域活性や自然欠乏症候群の提唱などの活動をしている。富士箱根伊豆国立公園に位置する滞在施設「日月倶楽部」では、ヨガや瞑想などのマインドフルネス、企業の健康管理者への指導など雄大な自然環境に身を置いて行う各種滞在プログラムを提供している。
[朝霧高原診療所] https://www.asagiri-kogen-clinic.com/
[日月倶楽部] https://hitsuki-club.com/
ライター 濱岡 操緒
大学卒業後、大手ゲーム会社に就職。広報宣伝部にて主に社内報や広報誌などの編集主幹を務める。退職後は母親向けの媒体、ウエディング関連の媒体などを手掛ける編集プロダクションに所属。現在はフリーランスとして書籍・雑誌・WEBメディアなどの編集・執筆、撮影ディレクションなど幅広く活動中。プライベートでは1児の母。最近の健康習慣は、ミトコンドリア活性化。