“健康に良い”という視点だけで食べ物を選ぶのはNG!

体が怠い、気分がすっきりしない、おなかが重い…。こんなふうに、特に病気があるわけではないけれど何となく“優れない”と感じることはありませんか? 実は、こういった不調は自然から遠ざかり人工的な生活を送っていることと関係しています。

“明るくなったら活動を始めて、暗くなったら活動をやめて休む”というのが、人間本来の生活。昔は木や紙でつくられた家に住み、土の上を歩き、身の回りには多くの草木がある環境で、自然と一体となって暮らしていました。その生活が変化したのは200年前。日が沈んでも外灯がともり、家の中には照明があります。地面はアスファルトやタイルに変化し、ビルの間からは排気ガスを含んだ空気が流れ、体内には化学物質が入り込む。人類の歴史から考えればほんのわずかな期間で自然から切り離されてしまったのですから、体がおかしくなるのも当然でしょう。

食事で体に自然を取り込もう!


健康な体を取り戻すために必要なのは、自然と触れ合うこと。医学の父であるヒポクラテスが「自然から遠ざかるほど病気に近づく」という言葉を残していますが、自然の中に身を置き、季節を肌で感じ、太陽と月が織りなす昼夜のリズムに従って日々を暮らすことが健康に生きることにつながります。けれど、仕事や家事・育児などで忙しい毎日を送る人や都会に暮らす人にとって、自然との触れ合いは当たり前にできることではないかもしれません。

そんな今の時代であっても、手軽に自然と触れ合うことのできる方法があります。それが“食事”。食べ物であれば、住んでいる環境や生活スタイル問わず誰でも簡単に入手できますよね。肉や魚、野菜、穀物など、私たちが食べるものは全て自然から生み出されたもの。現代人が自然を体に取り込む最も効率の良い方法が、食べることなのです。

体に不調があると、薬を飲んだり病院に行ったりすることをイメージする人は多いことでしょう。もちろん、緊急時には薬や手術が必要です。けれど、体の不調を治すのに食べ物が大きな力になってくれることは多いのです。食べ物の正しい知識を得ることで、薬や病気に頼ることのない健康な生活を送ることができるんですよ。  もちろん、添加物の多い食品やジャンクフードは言うまでもなくNG。こういったものばかり食べていると、栄養バランスの乱れから病気を招くことにもなりかねません。それだけでなく、人口調味料や合成保存料といった化学薬品を体に取り込むことにもなります。人工的な食べ物はほどほどにし、できるだけ“自然”に近い食生活を送ることが理想です。

体に良い食べ物と食べ方とは?


健康になるための食事には、何をどのように食べるかといった食事の質が大切。まずは、次の3つのポイントを覚えておいてくださいね。

【1】旬の食べ物を選ぶ

ハウス栽培が常識となった今の時代は、多くの野菜を季節問わず手に入れることができます。しかし、旬の作物にはその季節に合った食効があることは知っておくべき。きゅうりやトマトなどの夏野菜であれば熱くなった体を冷やす効果が、小松菜や白菜、根菜類などの冬野菜には冷えた体を温める効果があります。時季のものを食べることは、体のためにとても意味があることです。それだけでなく、季節の食材を食べることは昔の人間にとってはごく当たり前で自然な食生活。“自然を体に取り入れる”という意味でも、旬の食べ物を選ぶことは健康を保つために重要なことなのです。

【2】土地のものを食べる

西洋人に比べて東洋人の胴が長いのは、東洋人が消化に時間のかかる野菜や穀物を中心に食べていたことで腸が長くなったことが理由といわれています。日本人の食生活が欧米化したとはいえ100年と経っておらず、外国の食べ物に体が完全に適応しているとはいえません。腸内環境に悩む人が多いのも、欧米的な食事が起因するところもあるのです。また、食べ物がもつ作用も考えるべき点です。例えば、熱帯の果物には体を冷やす作用をもつものが少なくありません。常夏の国であれば有効ですが、日本では夏以外に食べるのは不向き。日本人の体は、日本の食べ物でできています。日本人の体に合うのは、昔から日本で作られ、先祖の代から口にしてきた食べ物です。

【3】いろいろなものを食べる

健康に良い、ダイエット効果がある、アンチエイジング効果がある…などと見聞きし、特定の食材に固執してしまう人をよく見かけます。しかし、同じ食材を食べ続けたり食べ過ぎたりすると、栄養バランスが崩れるだけでなく「遅延型アレルギー」の心配も生じます。口にしてすぐに反応が出る「即時型アレルギー」に対し、アレルギー反応の原因となる物質が少しずつ体に蓄積され、限界に達した時に反応が出るものです。遅延型アレルギーは、精密な検査をしなければ原因物質を突き止めることができないため、全ての食べ物がアレルギーの原因物質となり得ることは覚えておきたいものです。

 そして、最も大切なのがその食べ物が自分の体質に合っているかどうかを知ること。体に良いといっても、全ての人に健康効果をもたらすわけではないからです。人によっては、逆効果になる場合もあるのです。例えば、体を温める効果のある食べ物は冷え性の人には向いていますが、ほてりやすい体質の人には不向きですよね。東洋医学的視点では、人間の体質は何百にも分けられます。その中で、現代人に多いのが8つのタイプ。どのタイプに該当するのかを知り、自分に合う食べ物を選ぶことが体の不調を治す最高の療法となります。次回、詳しくお話ししましょう。

この記事の監修者
朝霧高原診療所 院長 昭和大学医学部客員教授 山本 竜隆(やまもと たつたか)

聖マリアンナ医科大学、昭和大学医学部大学院卒業。医師・医学博士。地域医療とヘルスツーリズムの両輪で、地域活性や自然欠乏症候群の提唱などの活動をしている。富士箱根伊豆国立公園に位置する滞在施設「日月倶楽部」では、ヨガや瞑想などのマインドフルネス、企業の健康管理者への指導など雄大な自然環境に身を置いて行う各種滞在プログラムを提供している。
[朝霧高原診療所] https://www.asagiri-kogen-clinic.com/
[日月倶楽部] https://hitsuki-club.com/


ライター 濱岡 操緒はまおか みさお

大学卒業後、大手ゲーム会社に就職。広報宣伝部にて主に社内報や広報誌などの編集主幹を務める。退職後は母親向けの媒体、ウエディング関連の媒体などを手掛ける編集プロダクションに所属。現在はフリーランスとして書籍・雑誌・WEBメディアなどの編集・執筆、撮影ディレクションなど幅広く活動中。プライベートでは1児の母。最近の健康習慣は、ミトコンドリア活性化。

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