コラム監修・山本竜隆医師が目指す統合医療【2】まだまだ発展する“やまもと村”。その未来予想図とは
朝霧高原診療所の院長・山本竜隆先生のもう一つの顔が、「WELLNESS UNION」代表としての活動。その拠点となるのが、滞在施設である「富士山静養園」「日月俱楽部」です。ただ単に宿泊するだけでなく養生医療やリトリート、自然欠乏症候群の解消を目的とし、活動しています。「疎開地としての役目を果たす場所でありたい」と話す先生に、“やまもと村”の展望について教えていただきました。
ここでしか体感できない非日常を提供する「富士山静養園」と「日月俱楽部」
富士山静養園と日月俱楽部は「富士箱根伊豆国立公園」内、約2万坪もの大自然の敷地内にあります。どちらも大きく定義するとリトリートや自然療法を目的とした施設ですが、富士山静養園が自然の“静的”体感施設、日月倶楽部は自然の“動的”体感施設として位置付けています。朝霧高原診療所では地域医療を、富士山静養園と日月俱楽部では養生医療を目的とし、この三つの施設を運営するのがWELLNESS UNIONです。
<富士山静養園>
富士山静養園は静寂さを感じることのできる施設。沢の音や風の音が感じられ、ニホンカモシカや野ウサギなどの野生動物が多く生息する自然のありのままが生きた場所でもあります。良い水・良い食・良い空気を感じることで自分自身を見つめ直す時間と空間、自然に生かされているという立場を認識してほしいという思いを込めて開設しました。提供する「雑草リトリート」や「菜食リトリート」といったプログラムでは、自然のリズムに心身を委ねられる体験ができます。
もともと夏でも30℃を超えることが少ない地ではありますが、約200年前に建てられた古民家をリノベーションした施設内は風通しが良く非常に涼しい。ここを訪れた人が「田舎のおばあちゃんの家みたい」と言うことがありますが、まさに懐かしさや落ち着きを感じることのできる空間です。
<日月倶楽部>
日月倶楽部は富士山とから駿河湾までが一望でき、雲の動きや太陽の動きを感じることのできるダイナミックさを表現した施設。標高700mの丘に位置し、気候療法を体感するのに適した中山保養地です。グランピング体験やマインドフルネスの各種プログラム、御来光ヨガ、ハーブ体験など、自然欠乏症候群を解消するきっかけの場となることを目的としています。
宿泊できる部屋は全部で7室。エアストリーム付きのコテージやアジア初の全天候型クリアドームテントといった、ちょっとユニークな部屋があるのも特長です。都会のビジネスパーソンや外国人観光客にも人気の施設で、森の探索や薪集めなどのアクティビティ、たき火を囲んでの語らいなど、共に過ごす時間で宿泊者同士の親睦が深まるようです。
生きる“糧”のあることが、本当のリトリートになる
朝霧高原診療所・富士山静養園・日月倶楽部という三つの施設から成るWELLNESS UNIONは、地域医療と統合医療実践の場であると同時に、地域活性という目標も掲げています。医療過疎と地域弱体の両者を解決したいというのも、この地を選んだ理由の一つです。
この町には豊かな森と水源、コミュニティの力という素晴らしい恵みがあり、さらにはインバウンド需要に貢献する富士山もあります。しかし、私がここに移住し診療所を開いた当初は、過疎化が進んでいたのも事実。強みのある地であるにもかかわらず、地元の人でさえその魅力に気付いていませんでした。
猪之頭区の食料自給率は、なんと300~400%。日本全体の食料自給率が約37%ですから、いかに恵まれた地であるかは言うに及ばず、将来的にも可能性の高い土地だというのは明白です。経済的なゆとりがあっても、生きていくための“糧”がなければ未来は明るくありません。リトリートという部分だけでなく、生きていくための安心と安全を担保できる、生き延びるための隠れ家、疎開地という意味でも富士山静養園と日月俱楽部は重要な要素を持つと思っています。
ここ最近は移住者が増え、子どもの数も増えている。令和3年度には猪之頭区が静岡県知事顕彰を受賞。過疎を食い止め、移住者を増やすポイントの一つになるのが医療機関の有無だそうで、この部分に朝霧高原診療所が貢献できたのだとしたら非常にうれしいことです。
いま計画中なのが、鶏小屋の設置による卵の自給と水力発電の設置によるエネルギーの自給。私も東京に暮らしていた頃は、都市的な価値基準、物の見方をしていました。でも、ここに来て分かったのが違った基準もあるのだということ。ようやく、自分の本当にやりたかったことに向き合えている気がします。WELLNESS UNIONの活動の柱は、自給と地域との密接な関係、インバウンドの3つ。今後も地域のみならず、国外へも発信できる活動を続けていきたいと思っています。
〒418-0108 静岡県富士宮市猪之頭2271
予約・問い合わせ:△0544-52-2611/info@hitsuki-club.com
【富士山静養園】https://www.mt.fuji-seiyoen.com/
【日月倶楽部】https://hitsuki-club.com/
この記事の監修者
朝霧高原診療所 院長 昭和大学医学部客員教授 山本 竜隆
聖マリアンナ医科大学、昭和大学医学部大学院卒業。医師・医学博士。地域医療とヘルスツーリズムの両輪で、地域活性や自然欠乏症候群の提唱などの活動をしている。富士箱根伊豆国立公園に位置する滞在施設「日月倶楽部」では、ヨガや瞑想などのマインドフルネス、企業の健康管理者への指導など雄大な自然環境に身を置いて行う各種滞在プログラムを提供している。
[朝霧高原診療所] https://www.asagiri-kogen-clinic.com/
[日月倶楽部] https://hitsuki-club.com/
ライター 濱岡 操緒
大学卒業後、大手ゲーム会社に就職。広報宣伝部にて主に社内報や広報誌などの編集主幹を務める。退職後は母親向けの媒体、ウエディング関連の媒体などを手掛ける編集プロダクションに所属。現在はフリーランスとして書籍・雑誌・WEBメディアなどの編集・執筆、撮影ディレクションなど幅広く活動中。プライベートでは1児の母。最近の健康習慣は、ミトコンドリア活性化。